■阪口涯子の俳句

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

解説 3


          
   
   ★ 阪口涯子句集・解説・井上光晴 (3)


 中之章四五句もまた、「青い花無く粘土の夏の夜学生」という慕情に似たやさしい叫びに包まれている。
 
           ふかい木目の垂直の家友ら消え

           学虚しそれから電車走らせる

 燃焼しつくした作品であろう。だが涯子の胸奥にはつねに、燃えつきることのない「こんとん」としたものが沈殿している。

彼の作が突如として、殆ど信じられない位の青春の焦燥感にさいなまれる
のは黒々とした胸のなかのつぶてを、一気に放とうとする時だ。

 「エンタープライズの橋」五句は、涯子の句が歴史の階段を、上昇も下降もならず、ただたちつくすのみの姿である。作品もまたそれ故に身動きもできず、熟していない。



          若い樹の花満開の泣いている橋

          ドストエフスキーの斜めな灯柱橋蒼ざめ

          凍海のくやしい過去の自分たち

          白い杖のまわり鉄片ふりつづける
 
          黒潮はてる街の無名なしずかなデモ


 黄沙すすりなく全く個人的な男、という激しい想いを彼方に配しているのだから、一層エンタープライズへ接近する短絡さが目立つ。

 流浪の果て、彼は砂丘に歩匍いつくばう草花をいつくしみながら海原を望むが、握りしめようとすればする程、砂は指の間から落ちこぼれる。

無残な時刻はすでに足許までしのび寄っており、つかみかけたかに見える太陽は蒼ざめるのみ。神は「ちっとも」答えないのである。

スポンサーサイト
  1. 2006/01/08(日) 18:02:12|
  2. ■ 『阪口涯子句集』 解説・井上光晴
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<●黒の回想 わが俳句遍歴記 (4) | ホーム | ●黒の回想 わが俳句遍歴記 (3)>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://k575.blog.fc2.com/tb.php/583-32738629
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。