■阪口涯子の俳句

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解説 5


   
   
   ★ 阪口涯子句集・解説・井上光晴 (5)完

 「リズムは思想だ」という考えには、リズムこそ思想に通じる一種の甘さがあり、にわかに頷き難いのだが、涯子の実作はむしろそういう言葉で拘束できぬ文学としての自由な呼吸が脈打つ。

    
           海辺にてあしたのことも解りますの

           からすはキリスト青の彼方に煙る

           胸にラッセル逃亡の一獣群写り


 海辺に佇む人はきっとやさしさのあまりに明日を望んでいないのである。黒い十字架と化したからすは、裏切者たちを嘲笑するかのように、ただ一羽離れて中空の青に消え行く。

 それらはゆるぎのない情景であり、優に小説一篇の秀作に比肩し得よう。にもかかわらず、これをも文学的過ぎると批評すれば、それこそ散文作家の現代俳句に対する偏見であろうか。

 つまり、どのようにも解釈できる方法と表現から、ついに逃れられぬ運命を、阪口涯子もまた背負っているといいたいのである。からすの句について「想念の色調」を見る金子兜太のみごとな鑑賞をわれわれは知っている。

<老ゲリラ無神の海をすべてみたり>を「非情を知り尽しての感受」だと受
け取る堀葦男の解釈は、それなりに筋が通っていよう。

「砂」を主題にした作に対する八木原祐計の批評も反撥を覚えない。しかも、なお私は潟に身を果つるという涯子作への印象を拭い去ることができないのだ。

涯子の文学精神は代表作を遥かに越えて「青の彼方に煙る」ものではないか。


             蒼々と猫族翔べり俺の旗

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  1. 2006/01/12(木) 08:28:17|
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